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「そうだよ。あのテキストっていうのはそれのことだよ。わたしが高校生だった頃、種茂先生とマンツーマンで特訓してたの。古文がすごく苦手だったから」
「質問なんですけど」
「うん」
「これって、将来のなんの役に立つんですか?」
「……難しい質問だね。直接的には立たないと思うけど、とりあえず、やり遂げたあとはゲームみたいな達成感が味わえるよ」
だから、とにかくやってみて、と相楽くんを促すと、ペンを握り、開始してから3分もたたずに彼は声を上げた。
「……は? これ、難しくね?」
「うん。これができたら難易度高めの中ボス攻略だよ」
「ムリ。全然終わる気がしないんスけど。せんせー、やったことあるならおれの代わりに解いといてよ」
……その、まなざし。
なんてかっこいいの。
やめて。代わりにやってあげたくなっちゃう。
でも、わたしはそうしたあとの未来が怖いから、ここは心を鬼にして……
「それはダメだから……もし、そのプリントを相楽くんの力で、全部正解で埋められたら、なにかご褒美あげる。もちろん、わからないところは質問してくれていいけど」
「やった。いいの? なんでも」
「わたしがあげられるものなら」
「じゃあ、せんせーの全部、おれにちょうだい」
「……はい?」
今、この目の前の美男子は、なんと?
「えっ、まじでいいの? だったらやる。こんなの、すぐに終わらせてやる」
「ちょ、ちょっと待って……」
なぜ、そうなる?
わたしは質問の意味で言ったのであって、肯定するために返事したわけじゃない。
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