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「如月先生、ちょっといい?」
無慈悲にも、授業は終わりを告げてしまう。
あれだけ恐怖だった、先生からの評価より、今から教壇で何が行われるかの方が気になってしまって、震えが止まらない。相楽くんも律儀に来てくれるし。
わたしは、おそるおそる、なんでしょうと訊ねた。
「今日の授業中の件だけど、相楽が怠けてやらなかった宿題分のペナルティは、あのテキスト5ページくらいを考えてる。どうせ相楽ひとりでやるのは不可能だろうから、マンツーマンで相楽の放課後居残り勉強を一週間見てほしいんだけど……引き受けてくれるか?」
「えっ、と……」
あの、わたし。
教育実習生、なんですけど?
やることたくさんあって、すごく、忙しいんですけど?
いくらわたしがここの卒業生で、生徒だったときのわたしを知ってるからって。
先生のパシリじゃないんだよ、まったく。
なんて、弱気なわたしがそんなこと言えるはずないよねぇ。
しばらく黙り込んでいると、見かねた先生が、
「ほら、元はと言えば、相楽が悪いんだから、ちゃんとお願いしなさい」
と、そんなことを言い出した。
「如月せんせー、おねがいします」
待って。
ずっと妄想してきた、相楽くんの眼差しが、わたしに向けられている。
しかも、わたしに懇願している。上目遣い。
こんなの、こんなの……
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