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指し示す理由
「時間ダ。常田 優斗(ツネダ ユウト)。答エヲ聞カシテモラオウ。」
パソコンの画面から聞こえてくるその機械的な野太い声はゲームマスターのものだった。毎回、5日経つとメールが届き、そのメールに添付されているURLを開くとゲームマスターの元へとつながることができる。
「ああ、終わらしてやるさ。犯人はもう分かった。」
「ナラバ、画面ニ映ッテイル6名ノ容疑者ノ中カラソノ者ヲ指シ示セ。」
優斗は震える手でマウスを持ち、ゆっくりと暗殺者の元まで矢印を動かしていく。後は左ボタンをクリックするだけだった。
もう3度目になる優斗であったが、慣れることはなかった。自分で暗殺の依頼をした笑山は前任していた高校で理事長の息子であることをいいことに女生徒にわいせつ行為を繰り返すクソ野郎だった。中には鬱になり、社会からドロップアウトしてしまった人もいる。そんな奴が殺されてしまうことに優斗は罪悪感を覚えはしなかった。
しかし、これから彼が指名しようとしている人間は暗殺者ではあるもののそれ以外の罪があるかどうか知らない者である。周りはこんなにも静かなのかと思えるほどに無音であった。自分の依頼で、それ故に暗殺者となった者を殺すことになる罪悪感に優斗は吐き気すら催すほどでもあった。
「何ヲシテイル。早クシロ。負ケタイノカ?」
ゲームマスターの声がその静寂を破る。
優斗は静寂が破れるのと同時にある男の姿を思い出す。
「分かっている!こっちだって負けられない理由があるんだよ!」
そして、マウスの左ボタンをクリックする。
「犯人はあんただ。」
暗殺ゲーム:依頼者のターン
終了
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