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かくして、“魔王様のひきこもりを脱出させる大作戦”が開始されたのだった。
どんな番組なら、魔王様の気を引くことが可能なのか?本当なら、魔王様が悩んでいる理由を探し当てて解決するのが一番なのだが、残念ながら誰に聞いてもその心当たりがないのでどうしようもない。
とにかく魔王様が楽しくなるようなテレビ企画を考える、ということになったのだが。
「却―――下!」
指揮を執ることになった俺は、他の魔物が出してきた案を思いきりぶん投げることになった。なお、現在魔王城(仮)となったのは、勇者がいる町の近くの森の中である。前任の魔王様が使ってた、廃墟同然だった城をざっくり改装して使用中だ。あっちこっち穴はあいてるし電気は最低限しか通ってないし虫入ってくる埃っぽいしと最低な環境だが、今は雨風しのげるだけマシというものである。
その会議室で、とにかく魔物たちから面白い企画を考案・提出させたのだが。
「“楽しい世界征服の方法”なんて番組作ったところで、人間どものテレビ局がOK出すわけねーだろ!同じ理由で“人肉食のススメ”とかもダメだし真昼間から“無限怨霊の城から脱出するツアー”とかもナシ!子供が泣く!ていうか“良い子に教える子供の作り方”って案出した奴誰だよ確信犯だろ!ゴールデンタイムだっつーのエログロ禁止!」
「えええ……」
「だって俺ら、こんなことにならなかったら魔王様の命令で今頃各地を襲ってた荒くれ者ばっかりですよ?犯罪の方法や人間泣かせる方法は心得てても、喜ばせる方法なんか知ってるわけないじゃないですかー」
「以下同文」
いや、それもそうなのだが。いくらなんでもやる気がなさすぎるのではないだろうか。未だに積極的に次の案を出そうとしてくるのはあの側近のジジイばっかりである。事あるごとに自主規制やらナイスボートやら入りそうな内容で何で通ると思っているのか知りたい。ていうかお前、人間の女に興味あったのか。涼しい顔してエロジジイだったのかと言いたい。一個、明らかに魔王様をモデルに女体化してあはんうふんするドラマの企画っぽいのがあったのだが、正直見なかったことにしたいほどである。
「ろくでもねぇな、魔物ってのは!仕方ない、俺がとっておきの案を出してやるよ!」
はい!と手を挙げたのは――勇者。
ちょっと待てお前、なんでナチュラルに魔物会議に交じってるの?普通に参加してるの、ねえ?
「ずばり、俺の出身……日本のお笑いをテレビでやればいいんだよ!」
「お笑い?」
「そうだ。ていうか、ぶっちゃけ魔王退治とかモンスター退治とか危なくて面倒くさくて大変そうなことよりずっとこっちのが俺の性に合ってるしな!」
おい、勇者なのに平気で魔王退治面倒くさいとか抜かしたんですけどこの人。異世界転生させる相手を間違えてませんか女神様。
あきれ果てる俺をよそに、彼はずびしっと俺を指さして告げたのである。
「つまり!俺とお前で……お笑いコンビを組んで漫才をする!全力でギャグやって、魔王サマを笑わせるんだ!」
「え、えええええ!?」
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