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なにせどれも美しい写真であることには変わりないのですから、写真家としては誰かに見てもらいたくなったのかもしれません。
不慣れなSNSにアカウントを作り、それらしく写真の内容で物語を演出しながら、おっかなびっくり公開してみたのです。
すると、どうでしょう―
最初の数日はほとんど反応がありませんでしたが、その後一気に閲覧者や、フォロワーというのでしょうか、そういった方々の人数が急激に増えました。
何百、何千もの方々が数えきれない「いいね」を送ってくれます。
そして「キレイ」「あこがれる」といったメッセージも絶え間なく、本当に絶え間なく届くのです。
ああ、なるほど。
私は誰にともなくつぶやきました。
人の頭に巣くう「後悔」という悪魔は、テクノロジーの世の中になって、きっと格好の居場所を見つけたのです。
そこはインターネットという、存在しないもう一つの世界。加工のされた架空の美しさが席巻する場所。
I should have, I would have。
実現しない世界、実現しなかった過去。
そんな仮定法は知らないうちに、我々の頭にしっかり刻み込まれています。
そして人々がそれから解放される日は、どうやらきっと、いやますます、当分はやって来ないようです。
(完)
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