『オンライン.unko』スタートアップキット

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『オンライン.unko』スタートアップキット

 玄関で配達員からケーキ箱ぐらいのダンボール箱を受け取り、毒島はすぐ自室に戻って席に着き、ダンボールを開封した。 『オンライン.unko』とお洒落な黒いロゴが印字された白い箱が入っていた。  毒島はさらに箱を開けて、中身を確認する。 『オンライン.unko』取扱説明書と1年間の保証書、IDとパスワードが書かれた紙、セットアップディスク、血圧を測る時に巻くような厚手の布、パソコンに繋ぐUSBケーブルと給電用のUSBケーブル、ACアダプターが入っていた。  価格は税込み6,800円。  取扱説明書は何重にも折り畳まれた1枚の紙である。毒島は広げてみると、横長の紙の下半分が全て小さな文字で書かれた警告文や注意書きで占められていた。 (こんなもの、いちいち全部読んでいられない)  毒島は上半分の始め方だけに目を通しながら、作業を開始した。  まず、パソコンにセットアップディスクを入れて、老廃物を.unkoファイルに変換するプログラム『消化Key』をインストールする。マウスを動かして、契約に同意するの□枠にレ点チェックを入れ、数分でインストールが終わり、毒島はディスクを取り出した。  次に、ACアダプターを電源タップに差し込み、布の表面に附いた基盤のUSB端子とケーブルを繋げて給電する。基盤にはもう1つUSBの穴が開いていて、これにもUSBケーブルを差してこちらはパソコンのUSB端子と接続する。USB規格は最新のUSB4.4だが、USB2.0以上なら正常に動作する。  この作業が終わると、毒島は布をとりあえず右の前腕に巻く。実際に使ってみて足や腰に巻き直すなど試そうと考えた。  右腕に巻いて、布に附いた基盤のスイッチをonにする。 (こっ、これは!?)  電気が右腕から全身に入り込んで来ると、毒島は全身に鳥肌を立たせた。  痺れたのではない。 (力が漲る……!)  右腕から肉体に栄養が補給されて、若返った錯覚を肉体が感じる。  (確かにこれなら腹は減らない!)  パソコン画面の右下で『消化Key』のアイコンが表示される。  毒島は右下の小さなアイコンをクリックして、『消化Key』の画面を映す。  画面中央に『消化Key』の四角い窓が表示される。  タスクマネージャーのように、パフォーマンスが表示される。  リアルタイムで肉体の老廃物を.unkoファイルに変換しているプログラム。  現在、毒島の老廃物は150GBの.unkoファイルをパソコンのストレージに創り出している。あまり溜めるとパソコンのストレージが.unkoまみれになってしまう。  『消化Key』はストレージの.unkoファイルが1TB(1000GB)に達すると、削除を促す警告が自動で表示されるように設定されている。  しかし毒島は、.unkoファイルを『オンライン.unko』公式トイレに送るとポイントが貰える話が気になっていたので、早速『消化Key』が表示したハイパーリンクをクリックして『https://www.online.unko.com』をブラウザで表示する。  製品の写真や各種ポイントサイトとの連携を大きく謳っている公式サイト。上部にIDとパスワードを入力する窓がある。  毒島はIDとパスワードが書かれた用紙を見ながら、入力してログインする。  公式トイレの中央に表示される、正真正銘の白い便器の画像。  毒島は150GBの.unkoファイルのアイコンを長押し右クリックで移動させ、公式トイレの上まで持ってくるとマウスから指を離す。  スピーカーからトイレの水を流す音が鳴り、パソコンのストレージから.unkoファイルが削除されると、『ご利用ありがとうございました!』と表示されて、事前に登録しておいたポイントサイトに150ポイントが付与された旨が通知された。 (たったこれだけでポイントが貰えるなんて……!)  ブラウザを閉じて、『消化Key』のパフォーマンスを再表示する毒島。  まだ.unkoファイルは1GBも作られていない。  1GB辺り1ポイント貰えることを確認した毒島は.unkoファイルが1TB溜まるまで『エクリプス』で遊ぼうと考え、ゲームを起動した。
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