第3話 悪魔との出会い

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 塔を破壊してしまう魔法陣だったらどうしましょう。  そんなことを考えていると、魔法陣から一人の男性が姿を現しました。  貴族然とした質のいい服を身にまとい、黒々とした髪を撫で付けた美丈夫です。  お芝居に出ている人気の役者様よりも整った顔立ちをしていますが、人間ではないようでした。  その証拠に、男性の背中にはコウモリのような羽根が生えています。  そして、宙に浮いています。  まるで、物語に出てきた悪魔のようでした。 「その通りだ、人間よ」  私の心を読んだのでしょうか?  男性はそういうと、微笑んで私に近づいてきます。 「この魔法陣を発動させたのはお主であろう。オレ様はセイル。オレ様に何でも願うがいい」 「……結構です」 「なに?」  私は現実逃避から戻り、必死に悪魔への返答を考えます。  失礼な返答をしては魂を取られるかもしれません。  さきほどは咄嗟(とっさ)に結構ですなどと言ってしまいましたが、これ以上の失言は避けなければ。  私は彼の前に(ひざまず)き、言葉を選びながら返事をしました。
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