第3話 悪魔との出会い

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「特に、お願いはございません。セイル様に捧げるような供物(くもつ)もありませんし、私はこの地下を綺麗にしたかっただけで、貴方様を()び出すつもりではなかったのです。申し訳ございません……」 「む、ぐぬ……ほ、本当になにもないのか? 美味しいご飯が食べたいであるとか、美しいドレスが着たいであるとか!」 「お、美味しいご飯……」  つい、木箱の中のパンを想像して魅力を感じてしまいました。  いけません。  悪魔と契約してしまっては、未来永劫(みらいえいごう)地獄に(とら)われてしまいます。  私はふるふると首を振り、セイル様を見据(みす)えました。 「結構ですわ」 「で、ではこうしよう、オレ様の出す料理を試しに食べてみるがよい! 気に入れば契約だ。な?」  なんでしょう、この必死さは。  出てきた時に感じた高貴な印象は吹き飛んでしまいました。  まるで新しい商品を売り込みに来た商人のようです。
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