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私が目を閉じると、セイル様が近付いてくる気配がします。
大きな手が私の腰と後頭部に回され、ぐいと引き寄せられました。
私はセイル様の胸元に手を置きます。
すると、セイル様が動きを止めました。
どうしたのだろうと目を開けると、すぐそばにセイル様の顔があって息が詰まります。
きめ細やかな肌、吸い込まれそうなくらい深く赤い瞳、色素の薄い唇。
どうしてこうも整っているのでしょう。
人間離れした美貌です。悪魔ですので、当然なのかもしれませんが。
私の顔は大丈夫かと不安になります。
「セイル様?」
「あー、その、手を置いたのは……拒絶の意思表示というわけではないのだな?」
私の置いた手を、そんな風に受け取っていたなんて。
こんなに優しい悪魔がいるでしょうか。
目の前にいるのですけれど。
緊張して張り詰めていた気持ちが、解れていくのが分かりました。
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