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他者の手が自分に触れています。
それだけで鳥肌が立ち、私は身動きが取れなくなりました。
一応は公爵令嬢である私の身分に配慮してか、私に触れる騎士達も一定以上の身分にある者たちであるようでした。
ただ、そんな配慮は私にとって何の意味もありません。
その中には、仲が良いと思っていた女性騎士の姿もありました。
私が彼女を見つめると、兜の下で顔を歪ませたように見えます。
彼女も、私を憎からず思ってくれていたのでしょうか。
王子の目は、もう私を見ていないというのに。
騎士達に引き連れられて王城から去る私を、周囲の貴族達が物珍しげに見ています。
数人の口からは、私が悪い令嬢なのだという言葉が聞こえてきます。
悪い噂も流されていたのでしょうか。
随分と準備のいいことです。
誰も王子の陰にいる彼女を責めることはありません。
悪いのは私だと、瞬く間に広まったようでした。
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