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仄かに舌に残る苦味は、確かにクッキーに合いました。
口に含んで少し歯を立てればほろほろと崩れてしまうクッキーは、まるで砂糖菓子にも似た甘さでした。
セイル様は食事が必要ないだけで、味が分からないわけでも食べられないわけでもありません。
さきほどおっしゃっていたようにお酒はお好きなようですし、私と一緒に紅茶を口にしてくださいます。
頼めばクッキーも食べてくださるでしょうけれど、甘いものはお好きではないかと思い、私だけが口にしていました。
「なぁ、お主にこんなことをしたやつらを懲らしめなくてよいのか?」
セイル様からその問いが来るのは初めてではありません。
度々、『塔から出たくはないのか』ですとか今のようなことを私に問います。
私はその度、首を横に振るのでした。
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