第6話 しあわせな毎日

5/7
前へ
/94ページ
次へ
「よいのです。何をしても、私の生活は元には戻りません。それに、今こうしてセイル様と過ごす日々の方が、幸せなのですもの。塔から出たとて行く宛もありませんし、セイル様のご迷惑でなければ、私は死ぬまでここで過ごしますわ」 「迷惑だなどということはない。お主が望むことをしてやりたいだけであるからな」 「セイル様は……どうしてそこまで私に優しくしてくださるのですか?」  私の魔力が魅力的なのでしょうか。  ですが、私は大量に魔力をさしあげることができませんし、きっともっと効率の良い集め方はあるはずです。  セイル様に与えているものよりも、私がセイル様にもらっているものの方が多いのですから、私との契約にはあまり旨味(うまみ)がないように思えます。 「お……」 「お?」 「オレ様が、…………好きでやっていることだ、お主の気にするところではない」  やけに長い沈黙の中に、私の名前が含まれている気がしました。  私のことが好きだから、と。  それは、私の都合のいい空耳でしょう。  セイル様がそんなことをおっしゃるはずがありませんし。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加