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「よいのです。何をしても、私の生活は元には戻りません。それに、今こうしてセイル様と過ごす日々の方が、幸せなのですもの。塔から出たとて行く宛もありませんし、セイル様のご迷惑でなければ、私は死ぬまでここで過ごしますわ」
「迷惑だなどということはない。お主が望むことをしてやりたいだけであるからな」
「セイル様は……どうしてそこまで私に優しくしてくださるのですか?」
私の魔力が魅力的なのでしょうか。
ですが、私は大量に魔力をさしあげることができませんし、きっともっと効率の良い集め方はあるはずです。
セイル様に与えているものよりも、私がセイル様にもらっているものの方が多いのですから、私との契約にはあまり旨味がないように思えます。
「お……」
「お?」
「オレ様が、…………好きでやっていることだ、お主の気にするところではない」
やけに長い沈黙の中に、私の名前が含まれている気がしました。
私のことが好きだから、と。
それは、私の都合のいい空耳でしょう。
セイル様がそんなことをおっしゃるはずがありませんし。
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