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「ええい、もう良いのだそのような些事は!」
セイル様は椅子から立ち上がり、私の前に立ちました。
いつもより少しだけ乱暴な手つきで私の顎を持ち上げたと思うと、あっという間に唇を奪われます。
驚きで薄く開いていた口に器用に舌が滑り込み、私の舌を絡め取りました。
セイル様の舌は、私のものよりも少し長いようで、私がどう頑張っても勝てません。
「んんー……!」
セイル様の胸元にしがみつきながら、必死で舌を絡めますが、セイル様の舌がさらに強く深く絡みついてきただけで、私はちっとも敵いません。
私はセイル様のことで精一杯なのに、セイル様にはまだ余裕があるようです。
塔の上の方に向かって、何やら手を振っていらっしゃるようでした。
「ふ、はぁ……っ」
「ごちそうさまでした」
「ご、ごちそう、さまでした」
私が背もたれに体重を預けて呼吸を整えている内に、ティーセットはセイル様の手によって片付けられていきます。
私が文句の付けようのない清潔さを保ってくださるセイル様は、まるで天使のようでした。
「それは、褒め言葉ではないぞ」
「申し訳ございません」
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