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そこまでされれば、私が何を言ったところでどうにもならないのは明白です。
ですので私は、精一杯いつも通りに振る舞いました。
広がりもしないスカートを小さく摘み、恭しく頭を下げます。
「ごきげんよう、皆様。そして、さようなら」
「連れて行け!」
父も、母も、兄も、誰一人、私を見ておりませんでした。
なんて潔いのでしょう。
涙も出ませんわ。
それから手枷足枷を嵌められて、私は車輪の付いた檻のようなものに乗せられました。
見せしめのために街を練り歩きでもするのかと思いましたが、ご丁寧に檻の外側には幕が降ろされ、運ばれていく私の姿は誰の目にも触れませんでした。
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