第1章 唄の始まり

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* 学校が一緒だと知り、放課後は教室まで迎えに行って、あの場所へ向かう。 初めて会ったあの灯台で空や海に届けるように歌う。 それがいつの間にか習慣になっていた。 学校はつまらないけど、学校が終わったあとにはしあわせが待っている。 何にも縛られず、ただ自由に歌うことができる。 その時、わかった。 歌は、音楽は、 僕らにしあわせや喜びを与えてくれるものだということを。 そして、美しいものだと。これがいちばん大切だろう。 雨の音や波の音いろいろな音が''音楽''という名の芸術だということ。 音楽はこの世のいろいろな音が重なっていって、ひとつの歌となるんだ。 そう思うと、音楽は奥が深いなと考えさせられる部分もある。 「音楽って深いんだな。」俺はぽつりと呟いた。 「そうだね。」彼女は音楽の奥深さを知っているかのように 下を向いて答えた。目が潤んでいるようだった。 「唄夏は、音楽の奥深さを知っているのか?」 思わず聞いてしまった。 聞いていいのかわからなかったが、気になったんだ。 「知ってるよ。だから聞いてほしいの。私の過去の話。」 「あぁ。聞くよ。」 「ありがとう。」 彼女の過去は壮絶なものだった。
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