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元カノの彼
肥口仙太郎(ひぐちせんたろう)は一瞬驚いた顔をしたがすぐに表情を戻す。
何か言われる前に一葉は「はじめまして」とあいさつをすると仙太郎も「はじめまして」と答えた。
無理だ、こんな所にいたくない元カノの今カレが自分の元カレだなんて、そして信彦がバイであること彼女と会っていること、もう心が悲鳴をあげそうだった。
「ごめんちょっとお手洗いに」
そう言って席を立つ。
もう一秒もあの場にいられない。
仙太郎も一度は座席に着いたがすぐに立ち上がると
「申し訳ないが俺も今来たばかりでちょっとお手洗いに行ってくるよ、ついでに彼の様子も見てくるから」
と言ってお手洗いに向かうと信彦はすみませんと言って仙太郎の後ろ姿を見送った。
一葉はこの状況についていけず、落ち着くために洗面台でジャバジャバと顔を洗っていた。
服に水飛沫がかかることも厭わなかった。
「大丈夫か?」
掛けられた声にビクりとして振り返るとそこには恋人の信彦ではなく元カレの仙太郎が立っていた。
「いいわけがない・・・」
そう言うと仙太郎を押しのけトイレからでてそのまま出口にむかう。
駅に向かいながら信彦にLINEを送る
『体調が悪いから彼女にあやまっておいて』
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