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デートの罠
信彦のスマホが着信を知らせる。
画面を見ると未花からだ、正直に言うと話を聞く気になれないがオレが出るまでしつこく鳴らし続ける。
見た目は可愛くて付き合い始めたときはどんなわがままもチャームポイントだと感じていたが、しばらくすると粘着質で見栄っ張りでなにより空気の読めない気の利かない人間だと気付いた。
「一葉とは正反対だ・・・」
一葉とはグラントというバーで出会った。
友人につれていかれて、そのバーがいわゆる出会いの場所的な役割があることを知らなかった。
ただ普通に洒落たお店でカクテルの種類も豊富なのも気に入り、一人でも行くようになった。
一人でカウンターにいると何人かに誘われることがあったが、オレにはそういう目的は無かったので断っていた。
ところが時々店で会う一葉が気になり話をするようになって、一葉を知れば知るほど好きになっていった。
一葉は恋人に裏切られたことをいつまでも引きずっていて、何度も告白したがいい返事をもらえなかった。それでもめげずに一葉に愛をささやき、ようやく手に入れた恋人だった。
いつまでも鳴り続けるスマホに観念して電話に出ると
「もぉ!遅い!」
「何?」
「相談があるの、今から会えない?」
「もう深夜だよ無理だ」
「じゃあ、明日は?」
「二人で会うのはもうよそう、肥口さん素敵な人じゃん」
「そうよ、仙太郎はいい人よ。でも・・・・」
「じゃあ明日、夜にやっている水族館があるんだけど、わたしも仙太郎と一緒に行くから、それならいいでしょ?」
「それなら」
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