01. 教室

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僕と瀬里奈は名字が近いので 毎週月曜、運動場での全校朝礼の時には 必ず最前列で二人並ぶ。 僕は気になって時々、瀬里奈に チラチラと視線を送るが 彼女は知ってか知らずか 僕を気に留めることもなく正面を向いたまま。 好きとか気になると言う存在ではない それでも今日は一言、話しかけてみようか そんな決意を抱いて毎週、朝礼に臨むのだが 結局のところ、 「おはよう」の一言すら口に出せず 毎週無言で二人、隣に並ぶだけの日々が続いた。 こんな感じで平凡な時間が流れる中、 今月から僕と瀬里奈の席が近くになった。 相変わらず瀬里奈は校庭が見える窓際の席 その斜め後ろに僕が座っている。 ある日、僕はノートの端っこに そんな瀬里奈の後ろ姿を描いてみた。 それは これまで描いてきた中で最高傑作だった きっとモデルが良いから 僕は実力以上のものが描けたのだろう、 そう思いながらも その絵を本人に見せることなど出来ない 僕が机に肘をついてそんな自画自賛に浸っていた その時だった、 背中越しに声が聞こえた・・・ 「もしかして、その絵って…私じゃない?」 あまりの驚きに そのまま机から転がり落ちそうになった。 「あはははは!何してんの?」 瀬里奈は そんな僕の様子を見て 口に手を当てながら大笑いしていた これが正真正銘、 僕と瀨里奈との初めてのコンタクトだった。
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