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ー 私、お芝居とか好きで・・・
「将来、舞台とか出てみたいんだ」
「へえ、凄いね!それじゃ…」
「何?」
「別々の夢だけど、一緒に追いかけてみない?」
「緒方くんの夢って・・・何?」
「俺は将来イラストレーターとか漫画家を目指そうかな、って」
「それって…私があの時…?」
「そうだよ、あの時の言葉が俺の背中を…」
「そうかぁ、ステキな夢じゃない!私もがんばってみようかな」
放課後、誰もいない教室で
僕たちはそんな約束を交わした、
愛情も慕情もない異性の友人同士で。
そして迎えた卒業の日
「お互い夢を叶えたらまた再会しようね」
それが瀬里奈から告げられた
最期の言葉となった。
数年後、僕がある漫画家のアシスタントとして
小さな夢を叶えたその日
瀬里奈は自ら命を絶ってこの世を去った
" 窓の向こう側を見に行ってきます "
彼女が飛び降りたビルの窓際には
そんな一言をしたためた
紙切れが残されていたと言う。
その紙の裏側に僕があの日描いた
瀬里奈の後ろ姿のイラストがあったことなど
当然ながら僕が知ることはなかった。
詳しいことは何ひとつわからない
ただ彼女の居場所は窓の向こう側、
だったのだろう。
彼女は窓の向こう側に・・・
一体何を見ていたのだろうか?
そんなにまでして見たい景色が
そこにはあったのだろうか?
彼女は本当に
"窓の向こう側"へと行ってしまった
そしてもう戻ってくることはない。
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