冷血漢

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週末。今日は給料日の翌日だ。いつもは薄い財布が珍しく膨らんでいる。スナックの看板を眺めながら、狭い裏通りを歩いている。 「山崎じゃないか」 振り向くと、二メートル近い背丈の巨漢が恵比寿顔を崩して立っていた。金本義雄だった。 「久しぶりだな山崎」 「ああ。高校を卒業して以来だな」 悪夢が甦る。とっさに逃げ道を探すが、無駄だ。偶然を装っているが、金本が偶然に俺の前に現れるはずがない。きっと金本は俺の身辺を綿密に調べあげた上で俺の前に現れている。今逃げてもそれは、結局のところ単なる一時しのぎに過ぎない。 「再会を祝して一杯どうだ」 「いや、給料日前でスッカラカンなんだ」 「変だな。おまえの会社の給料日は十日締めの二十五日だろう。給料日からまだ一日しか立ってないぞ。もう全部使ったのか」 金本の目が俺の身体を貫く。 「ああ、いや」 「冗談だよ。奢るよ。それならいいだろ」 逃げる術が見つからない。俺は金本の後についてカクテルバーに入った。 金本は高校時代とは人が変わったように朗らかで、しかも饒舌だった。とにかくよく喋る。 「そうか。おまえも就職で苦労したか」
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