未来ペット

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未来ペット

「こら!たけし!またコロと遊んでばかり!早く宿題しなさい!」 母ちゃんは俺に怒鳴ってきた。 でも、いつもの風景だ。 「ちぇっ、分かったよう、うるさいなぁ・・・ゴメンなコロ、また遊んでやるからな」 僕はペットのコロに話かけ、大人しく机に座りタッチパネル式の歴史の教科書を開いて、勉強を始める。 「えぇっと、138億年前のビッグバンから宇宙の始まりで、46億年前の地球誕生から古生、それから生命の誕生が38億年前で、原生代になって、地球最初の氷河期が24億年前・・・それから古生代のカンブリア紀が始まって・・・ジュラ紀が2億年前で始祖鳥の出現・・・1.5億年前の白亜紀で・・・恐竜の誕生が2億5千万年前で絶滅が6千5万円前と・・・」 もうすぐテストがあるので、厚さ5mmの電子ノートに書き写しながら覚える。 「ふぅ、こんなことを覚えていったい何の役に立つんだよ・・・」 僕はしばらく黙って勉強をしつつ、つい文句を言っていた。 文句を言っても仕方ないことは分かっているが、文句の一つでも言わなければストレスで爆発してしまいそうだった。 「・・・よーし、そろそろ終盤だ。第一次世界大戦が1914年開始、第二次世界大戦が1939年から1945年の6年間、第三次世界大戦が2055年から2069年の14年間で、この最後の戦争で人間の約4分の3が死んだと・・・よし!一通り勉強が終わったから、コロの散歩でもするかなぁ!」 僕は真っ黒の翼を広げながら、うーんと背伸びをした。 第三次世界大戦では至る所で核戦争が起こり、その際に放射能の影響からか突然変異(ミュータント)が発生し、人間とカラスとイルカを合わせたような融合生物が生まれた。 それが僕らの先祖だ。 その先祖が人間を狩って食べて暮らしていたが、昨年から人間も「絶滅危惧種」に認定され、保護されることになった。 ある地域ではまだ人間を養殖し食用にもされているが、「ペット」としても最近売り始められたので、早速飼ってみたが、知能も低いし翼も無いし泳げなくて不便なのに、よく長年も地球の中心的存在だったなぁと感心する。 僕は部屋から出てリビングに向かうと、人間のコロが横になって寝ている。 「さぁコロ、お散歩に行こう。飛んでばかりだと足腰が弱るからね」 「いっしっしっしっ!」 コロは笑顔で喜んで返事をした。 人間達はコンピュータなど原始的なものや車や飛行機、潜水艦などを使って移動していたらしいが、3Dホログラムでの会合が今では当たり前となり、近場への移動も自分で空を飛んだり時速50kmで泳げる僕達には全て不要だった。 人間の前は恐竜が中心的存在だったらしいが、僕達の次は一体どんな生物が中心となっているのだろうか。
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