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「このまとめ、すごいよ。俺はアナログの情報操作を得意とするけど、過去のことは基本情報を持っていないと人に聞くってところまで辿り着かなかったりする。だけど、デジタルの情報操作を得意とする亜紗美ちゃんは、その基本情報を得ることができる」
満はスマホの画面をとんとんと叩いて言った。
「8年前のこと気になるなら、調べるのもありかもね。俺たちが協力すれば、朔ちゃんが隠そうとしたことに辿り着ける気がするよ」
満が協力的なことにほっとすると同時に、やはりあのメッセージは満か、と思う。朔以外には、彼しかあのファイルを開くことはできないのだから。
「メッサージ」
満は、初めて口を開いた亜紗美に驚いたようだった。
「メッセージ?」
「残しましたか?」
満はきょとんとした様子で、首を傾げる。
「何の話?」
亜紗美は眉を寄せる。あれを書いた人なら、この問いだけで分かるはずだった。記録を残すのは主に亜紗美の仕事であり、あれは明らかに亜紗美に見られることを前提として残されたものだったから。しかし、満がしらを切っているようには見えない。
亜紗美は急に不安になってくる。あれを書いたのは誰なのか。何のために書いたのか。
危険だ、という頭の隅の警告が強まる。
この出来事を調べるということは、恐らく、生徒会の本質を暴くことにつながる。
もちろん、亜紗美も生徒会について知りたいと思った。生徒会として働く以上、その意義を見極める必要がある。
しかし、もし良くない事実に辿り着いてしまったら。
「亜紗美ちゃん?」
不審そうに名前を呼ばれて、はっと顔をあげる。咄嗟に、何でもない、というように首を横に振る。
「これ、調べる?」
満は確認するように尋ねてくる。
「⋯⋯危険?」
「かもね」
満は意地悪そうにははっと笑った。
「でも、何となく、亜紗美ちゃんがこれ調べたい理由分かるかも。まあ、そんな重く考えなくても、夏休み中の暇つぶし感覚でいいんじゃない」
彼はその言葉通り、お気楽そうに笑っていた。それを見ていると、亜紗美もそれでいいかという気分になってくる。
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