家族の嘘

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「よく来たわね。元気にしてた?」 「うん。風邪ひとつないよ」 「もしなっても僕が看病するから大丈夫」 「仲良くやってるみたいでよかった」  笑い合いながら中に入る。  広い玄関に対して廊下が横に伸びている。洗面所や寝室らしき部屋がある右側とは反対の左側へお母さんが進む。ついて行くと、明るいリビングが広がっていた。  涼しい冷気を感じてほっと一息つく。  白を基調とした内装や家具が、日に当たって清潔感を(かも)し出している。あるいはこの雰囲気をつくっているのもやはり、両親の穏やかな気性なのかもしれない。 「久しぶりだねぇ」  お父さんが右奥のキッチンから顔を覗かせた。近付いてきてお母さんに負けじと頭を撫でてきて、髪が乱れる。抵抗はしないが照れくさい。 「お父さん。そうでもないでしょ」  両親とも相変わらず歳を感じさせない若さを持っている。自称30歳だが、本当の歳は忘れた。  特にお父さんは、歳の離れた兄と言っても通じてしまいそうなほど若く見える。朔とは少しタイプの違う外見の綺麗さを持っている。どちらかというと鋭い目元は、警察官という職業に説得力を持たせている。しかし、笑うと眉が下がって一気に可愛らしい雰囲気になるので、今は普通の父親にしか見えなかった。  お母さんはお父さんとは違い、庶民的な可愛さを持っている。守ってあげたくなるような、たるとに似た女性らしさだ。しかし、彼女もまた田舎の専業主婦のように見えて、実際は優秀なキャリアウーマンだった。  2人とも家ではのんびりした雰囲気のため、仕事をしているところが想像つかない。 「2人暮しはどう?慣れてきた?」 「まあまあだよ」  朔が余計なことを言う前に、曖昧に答えておく。実際2人できちんと暮らし始めたのはつい最近のことなので、正直慣れたとは言えない。 「2人の好きなもの用意してるから、一緒に食べよう」  そう言うお母さんは、料理が得意だった。その味にはもちろん文句のつけようがない。忙しいときも好きでやっているからと、ご飯はきちんと作ってくれるのだ。離れて暮らしてみてそのありがたさが分かった。  机に並べられた色どりのいい料理を見て、ふと昔のことを思い出す。 「何笑ってるの」 「いや、お母さん、前は料理下手だったよなと思って。私がすごく小さい頃。たまに失敗して焦げた料理出てきたよね」
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