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亜紗美・過去の記録
坂倉亜紗美は薄暗い生徒会室で1人きり、パソコンに向かっていた。普段のこの場所は、朝霧高校の生徒会の面々が、仕事がなくても自然と集まる場所だ。
しかし、今日はいつもの賑やかさがない。というのも、つい先日に合宿があったのだ。文化祭の準備のある今の時期でも、流石に部屋で大人しく体を休めているのだろう。
そんな日にも学校に来ているのは、合宿での仕事の後処理を任された亜紗美くらいしかいなかった。生徒会の情報は全て、ここに常備してあるパソコンで扱うからだ。
亜紗美は、問題となった裏サイトを開いていた。
真坂京介の一件で問題視されたのは、裏サイトの影響力の大きさだった。このサイトを無くすという強行手段もあったが、それではまた別のサイトが生まれるだけだ。
だから、大袈裟な”演出”が必要だった。”演出”は人の記憶に残る。
京介は元々、男女共から好印象を持たれていた。彼が問題の渦中にいることで、その出来事は、裏サイトの利用者が求めるただのエンターテイメントではなくなる。後味の悪さを残すことができるのだ。
生徒会長である柳朔は、それを利用して先日の合宿で”演出”を行った。
具体的には、裏サイトに載せられた真偽の分からない噂を、わざと大きな問題に発展させたのだ。一部の生徒にそれ見せつけることが目的だった。情報社会では、その出来事はすぐに広まる。
そして、”演出”の記憶を定期的に裏サイトの利用者に思い出させるための操作が、亜紗美の仕事だった。今日はそのための下準備をしている。いくつものアカウントをバレないように作成して、数によって発言力を強めるのだ。
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