亜紗美・過去の記録

2/3
前へ
/66ページ
次へ
 亜紗美は、パソコンの画面から目を離してため息をつく。  今回の仕事の際に投稿者の素性を調べていたため、彼女には誰がどの書き込みをしているのか分かってしまっていた。その中には彼女が知っている名前もある。あまり意識しないようにと見てはいたが、気分が悪くなるのはどうしようもないことだった。  亜紗美は気分を変えるために、先に生徒会の記録を書こうと思った。これは毎回仕事の後に簡単な内容を記録するものだった。  これと過去も含めた全校生徒の情報を管理できるのは、情報係の特権であり、彼女が信用されている証拠だった。そのデータには、代々の生徒会のメンバーや仕事内容や功績等も書かれている。  今年度用のファイルを開いた時、不自然なそれにはすぐに気がついた。生徒会のメンバーが入れ替わってからまだ2ヶ月ほど。記録に残すような仕事は、数えるほどしかやっていない。だから、最新の記録として残されたその文字には、すぐに目がいった。 『生徒会は正義か?』  亜紗美が書いたものではなかった。このファイルを開くためのパスワードは、情報係の亜紗美と満、そして生徒会長の朔しか知らない。  亜紗美は妙な寒気を感じた。  それは恐らく、誰かが書いたという事実と、その言葉自体の両方に対してなのだろう。 (正義⋯⋯)  彼女が真っ先に思い出したのは、先程まで行っていた仕事についてだった。  朝霧高校生徒会は、全てにおいて特殊だ。もちろん、生徒会と聞いて想像できる普通の仕事も行う。しかし、それだけではない。先日の合宿のことのような、”余計なこと”もやる。  その”余計なこと”に関しては、最初に朔に声をかけられた時から、なんとなく聞いていた。亜紗美が生徒会に入ることを決めたのは、それが”正義”だと思ったからだろう。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加