亜紗美・過去の記録

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 しかし、それを真正面から問われている今、亜紗美はそれに対する答えに迷ってしまっていた。実際に、仕事をしたからかもしれない。  もちろん、合宿の時のことは、悪いことをしたとは思っていない。それでも、なぜ、という疑問はずっと抱いていた。なぜ、”余計なこと”を生徒会が行うのかと。  亜紗美は、その答えを探る能力が、情報が、自分には与えられていると思った。  今年度の記録を閉じて、全ての記録が入っているフォルダに戻る。記録をつけることがいつから始まったのかは知らないが、とにかく膨大な記録だ。  亜紗美は、一番最近の記録、数ヶ月前までの、前生徒会の時期の記録を開く。生徒会メンバーの中で、朔の名前だけにカッコがつけられている。彼の存在は1年の時から隠されていたようだ。  仕事内容をざっと見て、さらに前の年の記録も見ていく。  通常の仕事と“余計なこと”の記録は混在していたが、仕事内容を見るだけですぐに区別はついた。そして、”余計なこと”については、話を聞いていたのと実際の記録を見るのとでは、印象が違った。先輩たちの仕事の中には、驚くような内容も書いてある。  つい夢中で見てしまう。  しかし、どんどん遡って見ていくうちに、違和感をおぼえ始めた。それが何なのか、初めは分からなかった。15年ほど前から、もう一度現在に向かって注意深く見ていく。今度は、はっきりと何か違うと感じた。  違和感の原因は、8年前の記録だった。8年前を境にして、それ以前には”余計なこと”の記録がないのだ。  そして、8年前の記録の中でも、あるひとつの出来事に自然と目がいく。亜紗美は、見てはいけないものを見ているような気分で、詳しく見ていく。  最初は、普通にその事実に驚いた。それから、何故、と疑問が浮かんでくる。その後は、急に胸の奥から湧いてきた警告心と不安と興味とのせめぎ合いだった。 『生徒会は正義か?』  その問いの答えを求めて過去の記録を遡ってみたが、亜紗美の期待以上のものがそこにある。  危険な高揚感を胸に抱きながらも、詳しく調べずにはいられなかった。
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