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亜紗美・決意
記録というものは、事実をそのまま教えてくれる。生徒会の記録係がずっと真面目に記録していたため、それは不自然な事実だったが、これを隠そうとする意思は見られなかった。
しかし記録の欠点は、書かれていること以上は分からないところだ。肝心の理由が分からなかった。8年も前の出来事に関して、ネットで得られる以上の情報を集めることは、亜紗美にはできない。
亜紗美にはできないことをできる人には、1人、心当たりがあった。しかし、彼はあの問いを残した人かもしれなかった。
散々迷ったが、結局、亜紗美は彼に相談することにした。あの問いを書いた本人だとしても、亜紗美の知りたいことと彼の知りたいことは同じだろうと思ったから。もし書いた本人でなくても、彼はきっと協力してくれるはずだった。
そして、それは当たりだった。
彼は、直接会って話をしようと言ってきた。
「珍しいね、亜紗美ちゃんが話したいって言ってくるの。いつもは話そうって言っても話さないのに」
同じ情報係である青鳥満は、ソフトドリンクを持って目の前に座って言った。こういうのを嫌味というのだろうが、満には悪意がないことが分かるので、言い返そうとも思わない。
「それで、そんな亜紗美ちゃんが話したいことってすごく興味あるんだけど、どうしたの?」
メールを送った翌日に時間をとってくれた満は、予想通りの反応だ。
しかし、亜紗美は言葉を扱うことが苦手だった。それに、生徒会室だと他の人が来る可能性が高いので近くのファミレスを選んだが、満の声は大きく、周囲の目が気になってしまう。
満は、話し出すのを待ってくれている。メロンソーダを吸い込みながら、口を開かない亜紗美の顔を伺っている。
亜紗美はふと思いついて、自分のスマホを取り出す。データを見せればいいのだ。そうすれば、亜紗美が何か言わずとも、満は理解してくれるだろう。
違和感を持った8年前の生徒会の活動記録を画面に表示して、満の目の前に突き出す。本当は記録の持ち出しは厳禁だったが、家でも考えたくて、写真に残してきてしまったのだ。
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