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そこには、通常の仕事とは異なる生徒会の動きが書かれている。
『○月✕日 理事長と交渉成立。計画提示。新しい教員候補を選定。なお、理事長は信頼性ありと判断』
『○月△日 計画実行開始。1人目は国語教師・田中勇。生徒体罰疑惑により解雇』
⋯⋯⋯⋯
『▽月□日 最終ターゲット・赤羽浩志。教員脅迫疑惑により解雇。生徒には、契約期間更新時期の為と噂を流す』
○月✕日から▽月□日まで、約2ヶ月間の記録だ。
短期間の間に、校長も含めた10名近くの教師が、様々な”疑惑”で解雇されていた。理事長のみの判断ではなく生徒会が関与しており、計画性のあるものだということは明らかだった。その計画が記録されていたのだから。
後から亜紗美が調べてまとめたデータには、当時の学校の様子や解雇に至るまでの記録が、分かった範囲で書かれている。正直、全て噂や疑惑止まりで、解雇の確かな根拠があるようには見えなかった。
満はいつもと違って真剣な顔で画面を見ていた。目だけが文字を追って動いている。いつも咥えている飴が今日はないので、余計真剣に見える。あの飴は運勢占いなのだと、いつか言っていた。
亜紗美は、彼の反応を注意深く見る。あの意味深なメッセージを残した人かどうか。
彼はやがて、うっすらと笑みを浮かべる。
「これさ、たぶん噂に少し聞いたことあるやつかも」
亜紗美は首を傾げる。
「生徒会の在り方が大きく変わった理由、前の情報係の先輩が少しもらしたことがあったんだよね。それで朔ちゃんに軽く聞いてみたら、無言の圧力ってやつ?朔ちゃんそれ得意じゃん。それ以上聞けない雰囲気出されちゃった」
満が知っていることには驚かなかった。隠された情報ではなかったからだ。しかし、朔は隠そうとしていた。その時点で既に違和感がある。
しかし、隠そうとしていたのならば、あのメッセージを残したのは朔ではないと思われる。
「だからたぶん、俺は無意識にそれ以上気にしないようにしてたんだよね。だけど亜紗美ちゃんはそれに手を出した」
一瞬どきりとしたが、満は面白そうに笑っていた。
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