プロローグ

2/5
前へ
/84ページ
次へ
午前の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴ると同時に、ランチボックスを手に取り、足早に教室から出る。 やっと昼休みだ。 やっと一人になれる。 今日は6限までだから、あと2時間… 2時間頑張れば、やっと私が、私らしくなれる時間になる。 そう思うことで、苦痛の2時間をやり過ごそうとするのは、いつもの事。 中庭のベンチに座り、ランチボックスからお弁当箱を出し、膝の上に置いて蓋を開ける。 よし!彩りOK! 誰に見せる訳でもないけれど、自分で作ったお弁当に小さく笑みを零す。 好きな物だけに偏らず、彩りのバランスや栄養面も考えて、毎日自分で作る。 作りたがる母より先に起きて、作るのが毎日の日課になってしまった。 将来は、食の道に進みたい。 料理研究家の、母の影響は勿論あるけれど、母とはまた違う食の道に… そう考えるようになったのは、いつ頃だっただろう。 「頂きます」 合掌してから箸を持ち、鳥の照り焼きを頬張る。 うん!美味しい! まだ肌寒い季節に、外でお昼する人なんて私位だから、周りに人は居ない。 苦痛でしかない時間から解放されて、一時の安らぎとも言えるこの時間は、学校生活の中で、私にとって一番大切な時間…と言っても過言ではない。 静かで良いなぁ。 …と、心の中で思っていた途端、人の話し声が聞こえて来て、校舎の壁側に2つの影が見えた。 ……何で、ここで話すのよっ! 他所でやってよね! 「はぁー…」 一番大事な時間を邪魔された私は、深い溜め息を付いた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加