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暁 琉生がその言葉を発した時、どんな表情をしていたかなんて、私に背を向けているから分からない…が、暁 琉生に告白した女子がぼろぼろと涙を流すのは見える。
……盗み見してるみたいで、気分悪い。
先にここに居たのは私なのに。
そう思って、その二人から視線を逸らす。
折角のランチタイムだったのに。
「琉生のっ、琉生のバカっ!特別じゃないなら、簡単に好きなんて言わないでよっ!」
暁 琉生にそう叫んで、その場を後に走り去る女子。
確かにそうよね。
ごもっともな意見だと思う。
でも…顔だけに釣られて、挨拶みたいな軽いノリの『好き』という言葉に踊らされる方も、私からしたら同類だ。
どっちもどっちでしょ?
こんな茶番劇に、大事な時間を奪われたと思うと、余計に腹立たしい。
「バカはどっちだ?良く知りもしねぇ癖に…チッ」
心の中で、盛大に文句を言っていた私の思考が一瞬停止する。
先程の軽いノリの話し方と、特別ではないと言い切ったそのどちらでもない声色と……舌打ちが、暁 琉生から聞こえたからだ。
無意識に暁 琉生に顔を向けた私と、後ろに振り返った暁 琉生の目が、バッチリ合う。
長い前髪から覗く、眼鏡越しにだけど。
「…あ……今の…」
そう言ったきり黙り込んだ暁 琉生。
そこで、お互いの時が数秒止まった。
顔を向けた私も私だけど、何で後ろ振り向くのよっ!
再び戻ってきた思考が動き始め、先に視線逸らしたのは私だった。
別に…悪いことなんかしてないけど、居心地が良いとも言えない。
「あっれぇ~桜井さんじゃん!何なに?いつも昼休み居ないと思ったら、こんなとこで飯食ってんのぉ~?」
先程聞いた低い声と、舌打ちをした、同じ人物とは思えない程のテンションの高さで話し掛けられる。
まるで…何事も無かったかのように。
正直……ウザい。
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