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【side 琉生】
兄貴の所から戻った俺は、真っ直ぐキッチンに向かった。
俺が兄貴の家に行ってから2時間近く時間が過ぎている。
流石にもう片付け進んでるだろ。
そう思ってリビングのドアを開け、対面キッチンに目を向けると……惨状は相変わらずのままだった。
マジかよ……
俺も、美琴同様昼はサンドイッチで済ませた。
流石に夕飯までコンビニに頼るのはなぁ。
どうしたもんかな。
少し考えてから2人に近付き、声を掛ける。
「俺腹空いたんだけど」
その一言で、親父と柚月さんの動きがぴたっと止まる。
「昼は片付け優先して貰おうと思って声掛けなかったけど、夕飯……家で食えんの?もしかして出前とかになる?それならそれで仕方ないけど、俺皆と飯食えるの楽しみにしてたんだけどなぁ」
父子家庭で育ってきたけど、出前なんて今まで一度だって頼んだことない。
親父がいつもちゃんと飯作ってくれてたからだ。
まあ、オーナーになってからは忙しくて、流石に毎日は無理でも作れる時は作ってくれていた。
親の務めとかそういうのもあるだろうけど、やっぱり料理人としてのプライドもあるだろう。
きっと今の言葉は、料理研究家の柚月さんにも響いた筈だ。
そしてもう一押しする為に言葉を続ける。
「あと、俺お義母さんの作った飯も凄い楽しみにしてるんだよね!」
「お、お義母さん!?……潤くんっ!琉生くんが私の事『お義母さん』て呼んでくれたぁ!やだっ、どうしよう!凄い嬉しい!」
「うんうん!家族らしくて良いよね!俺も、美琴ちゃんに『お義父さん』て呼ばれたいな。……呼んでくれるかな?」
キッチンの片付けに、議論と拘りをぶつけ合ってたふたりの意識を、違う方に持っで行けたのは良かったけど……
美琴に負荷を掛けてしまったようにも思う。
すまん、美琴。
親父の奴、期待で目がキラッキラっしてるわ……
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