モノクローム

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「万華鏡をイメージしたんです。 覗いている景色は、二度と同じものが見えない。右に回せば違う形が、左に回せば違う形。人生と似ていると思って」 左右非対称に散りばめられた色や形には、そんな思いが込められていたんだ。 なるほどね。 人生はいつだって、選択の繰り返しだから。 「人生は自分で色付けする事ができる。 そんな世界を表現したくて描きました」 人生のターニングポイントとなる今、この絵と出会った事は不思議だ。 ううん。 この絵と出会ったから、私は進みたい道を見つめられたのか。 「あぁ…。 早く聞いておけば良かったです。そしたらまた違った見方が出来たのに…」 「いいんですよ。見てくれた人が感じた事が正解です」 そう言って嬉しそうに笑った。 「でも、もし……。 また見たくなったらいつでもどうぞ。自宅にアトリエを作っているので」 ポケットから名刺を取り出し、渡してくれた。 "Gallery monochrome" 「モノクローム……」 「不思議な縁ですね」 モノトーンの服を着た、一回りくらい年齢が違うであろう男性は、少しくすぐったそうに笑った。 そうか。 色がないからこそ、好きな色を選ぶことができるんだな。 普通という枠を飛び出す私は、これからどんな世界が待っているのだろう。 真っ黒な空には、白い星が一つだけ輝いていて、モノクロの世界は普くに広がっていた。
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