モノクローム

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はぁ、落ち着く………。 静かな空間に似つかわぬ奇抜な色の絵や、特徴的な創造物。 だからこそ、この世界観が引き立てられる。 白い空間は、邪魔をするものがない。 夜のギャラリーは人が少なくて、思う存分1人の空間を堪能できる。 あぁ。早くあの絵が見たい。 ここに来た目的はそれだから。 "早く早く"と、湧き出る衝動に突き動かされながら、ギャラリーの1番奥に足早に向かった。 ────あ。 一際美しい大きな絵。 ステンドグラスを描いたように、ガラスの中に様々な色が散りばめられているような。 私のお気に入りの絵の前には、先客が立っていた。 また、あの人いる…。 グレーのニットに、細身のパンツ。 黒縁のスタイリッシュな眼鏡をかけた男の人。 気付かれないように、小さな溜息を吐いて絵に近づくと、カツ…と控えめなヒールの音が鳴った。 その音に反応して、男が振り返ったから目が合った。 固まる体。 ペコリと軽く会釈をするも、男はフイッと目を逸して離れて行った。 ………感じ悪。 ほぼ毎日のように来ているが、必ず会う男の人。 30代半ばくらいだろうか。 独特の近寄りがたい雰囲気を持つ人で、眼鏡の奥に見える研ぎ澄まされたような目が、なんだか苦手だ。
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