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ただ、色とりどりの美しい世界を見たかった。
息苦しくて窮屈な毎日から逃げ出すように。
あと何年、休日が終わる夜は憂鬱になって、あと何年、休日を目指して働くのだろう。
本当は脱ぎ捨てたい、グレーのスーツに、ハイヒール。
私は"武装"したまま、家路とは逆方向へと歩く。
アスファルトに響く靴音は、引きずるような朝の音色とは違い軽快だ。
街の一画にある、白を貴重とした大きなギャラリー。
ガラス扉を潜ると、そこはカラフルな異世界が待っている。
この、吸い込まれるような感覚が好き。
胸が高鳴るような、なんとも言えない高揚感。
まだ名も無いクリエイターが、絵やオブジェを展示している期間限定のアートイベントへ、毎日通うようになっていた。
今日で最終日。
もう、この芸術品には会えなくなるのかと思うと、疲れた体にムチを打ってでも行かなくてはという思いでここに来た。
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