オンライン通信

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「どうですか、調子は?」 「ああ、とってもいいよ。何も問題ない」 「それは良かった。では、また明日」 「ちょっと待ってくれ」 「まだ何かありますか?」 「ああ……、いや、気分を悪くしないでほしいんだが……」 「ワタシがこれまでそんなことがありましたか」 「んん、ないよ、もちろん」 思わず乱暴なことを口走ってしまいそうになる。が、ギリギリ飲み込んだ。 あったからこその前置きなのだけれども。 以前、何が気に入らなかったのか、3日も連絡を寄こさないことがあった。 本当に死活問題だ。 「それは良かった。ケンカにでもなったらイヤですからね」 どういう気持ちでそんなことを言ってるのか。 でも、そんなのは口が裂けても言えない。 「で、できれば、できればでいいんだけども……」 言葉を選ぶ。 もう連絡がないのは困る。 「はい、なんでしょう?」 「ち、地球につないでもらいたいんだが……」 「は?なんですか、それ。サヨウナラ」 オンライン回線が切られた。 そして絶望が訪れる。 ここは火星移住計画の探査船、だったトコロ。 航路から外れ、漂流して幾年月。 乗組員はみな死に絶えた。 どこで引き当ててくれたのか、このオンラインだけが頼り。 なのに……、なのに……。 食物や水、いや、人の三大欲求も不自由しない船だけれど、 人恋しさだけは叶えてくれない。
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