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そのため年度末に総務部長、広報課長、業務支援室長の三者協議により業務支援の一環で、私をMECに応援として派遣することになったそうだ。業務支援室の先輩、近江さんは「あの時の室長、広報課長に恩を売ってきたって顔してたわよ」と、業務支援室長不在時に教えてくれた。
そんな経緯でMECの一員になったばかり、MECでは一番新人だ。そして今日がMECとしてのコンサートデビューだ。登場はコンサートの最後、一曲のみ。演奏する音楽隊員たちの前でフラッグ演技を行う。
あとはフラッグをキャッチして――。
垂直に放たれたフラッグは当然、垂直に戻ってくるはずだ。……はずだった。
――まずい。
フラッグは予想を裏切り、右後方へ吸い込まれるように落ちていく。
右後方には眉を寄せ、凛々しいスナイパーフェイスでアルトサックスを吹く隊員がいる。松田和輝巡査部長だ。上空から自分の身に差し迫る危機を感じたのか、松田さんが左眉を上げてこちらを見る。その目はすでに、「何やった」と言っている。
――避けてください!
演奏を止めないよう、口の形だけで伝えるも時すでに遅し。伸ばした手をすり抜けたガードはためらうことなく松田さんを襲う。
ふぁさっ、ゴン、カラン……。
フラッグをキャッチできなかった場合に現れる、三連音を立ててフラッグがステージに落ちる。
ちなみに三連音の最初の「ふぁさっ」で顔に旗がかかり、「ゴン」でフラッグの柄が頭を直撃し、「カラン」でフラッグがステージに落ちる。
フラッグが直撃した松田さんの手は一瞬止まっただけで、顔をしかめつつも演奏を続けている。
周りの隊員たちは横目で松田さんを見つつ、当事者の松田さんが続けるならと演奏を続けている。指揮をする森川千隊長も、ちらりと松田さんを見ただけで手は止めない。
それもそのはず、今はコンサートの最中だ。
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