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「おせーぞ」
「そ、ソライ!」
暗く冷たい檻の中にいたのは黒髪黒目が印象的な人間の少年、ソライであった。
「おら入れ!」
「おっと」
鬼に投げ込まれ、ジャンはソライに当たらないように体をひねって受け身を取った。
「いったいなぁ」
がしゃんと重い音がして鍵がかけられる。鬼の背中が見えなくなってからジャンは檻に触れてみる。
「頑張ったら出られそうだね」
「いや、無理だ」
「えっ?」
ソライはくいっと顎で隣を指した。ジャンが見ると、別の檻にアリアとアンがいた。
「アリア! アン!」
「やっと、目覚めたか、この、馬鹿」
憎まれ口を叩くアリアだったが、珍しく息が上がっており途切れ途切れに話している。目を凝らすと汗が金色の髪からしたたり落ちている。
「どうしたの?」
「アンが馬鹿して回復魔法しまくってた」
「悪かったってぇ」
隣では深緑の短髪と瞳を持つ青年――アンが胡坐をかいてしょぼんとしている。
「なにしたの?」
「いや出れそうやなと思って檻ぶち壊したら雷と水のダブルコンボ。さすがに死ぬかと思ったわ」
「てことだ」
ジャンは座ったままの話すソライを見下げた。
「無理やり出ようとすると罠が発動する」
「そりゃまぁご丁寧に。死ぬにはいい具合に強いぜ。人龍だから耐えれたが普通は即死だ」
「正直めっちゃ体が弱っとるわ」
「魔力使いすぎてオレも疲れた」
アリアがはぁとため息をついた。エルフの魔力はだいたい人間の十倍。魔眼を破った後だとしてもそれが枯渇気味だなんて、どれほど危ない状況だったのか。
「てかよくそんなに早く魔眼を見破れたね」
「ソライが早かったよな」
「そん次がアリアで俺。そんでジャンや」
「アヴェルスは……」
「多分ここにはこない」
断言したのはアリアだった。
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