第一章 鬼の集落

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「なんでや?」 「予想はついてんだろ? アヴェルスと同じ幻を見せる鬼なんて、オレは一人しか浮かばないぜ」 四人の間に訪れるひと時の沈黙。 「ヴァルシア・オーグ。アヴェルスの、双子の妹」 アリアのひそめた声。 「幻?」 疑問を上げたのはジャンだった。 「別に僕、幻は見てないよ?」 「あ、ジャンも俺と仲間やな。俺らがかかった魔眼の能力は違う。記憶が改ざんされたんやろ」 アンが説明する。 「あれやろ? 戦争で魔族が勝って自分らは奴隷として働いとるっていう胸糞悪いやつやろ」 あまりに同じだったから無言でブンブンと首を縦に振るジャン。 「俺らは力ありそうやったから使われてたんやろうな。んで、ひ弱な二人は……」 「てめぇ、も一回瀕死にしてやろうか?」 「ふぎゃっ……! ほ、ほへんへ!」 額に青筋を浮かべたアリアがアンの頬を思いっきり引っ張る。 「幻で気づいたらここにいた」 ソライが静かに言う。 「何を見てたの?」 ソライはその幻を思い浮かべた。 「ソライ!」 目の前で無残に殺されていく仲間たち。必死に伸ばされた手を、ソライは静かに見ていた。 「たすけ……」 アヴェルスが首を切り落とされこと切れる。ソライの足元まで広がっていく血だまり。  嘲笑う声が頭にこだまする。 「思い出すだけで反吐が出る」 いつもは見せない本気の顔に、ジャンは聞くのをやめた。なんとなくと予想はついた。ソライをこんな顔にさせられるのは、たった一人を除いて自分たちだけだという自覚があった。 「アリアは?」 「ん? エルフの国で平和に自分の使命を全うしてた」 さらっと答えるアリア。 「いい幻?」 「んや、暇すぎて辛かったぞ」 ジャンは飽き性なアリアをふふっと笑った。
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