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「ここが生活に使われるエネルギーを生み出す装置のある小屋です」
「すっごーい!」
一方でアヴェルスは集落を案内されていた。
全員が鬼に捕まった後、アヴェルスが起きるとお客様扱いされていた。
「発展してるんだねぇ」
「人間の技術を参考にしていますからね」
アヴェルスを案内しているのは鬼とは思えないきちんとした身なりと言葉使いの細身の鬼、リースだった。
「私たちは人間に敗れた後もこの場を守っています」
「そうみたいだね」
アヴェルスは奴隷として働いている人間を見て呟いた。
「ねぇ」
「はい?」
「本当にアーヴェの仲間は無事なんだよね?」
子供らしさが消え、鋭い視線がリースを刺す。
「えぇ、もちろんですとも」
「ならよかったぁ! ソライたち、楽しんでるかな?」
コロコロと笑うアヴェルス。リースは背中に汗が流れるのを感じた。
(あの迫力、さすが賞金首になるだけありますね……)
しかし笑顔の仮面はかぶり続ける。
「アヴェルス様、ヴァルシア様がお待ちです」
「うん!」
楽しみだなっとルンルンで向かうアヴェルス。
ヴァルシア。アヴェルスの双子の妹であり、同じ魔眼を持つ戦闘狂。とはいえ、アヴェルスにとっては唯一の肉親で可愛い妹だ。
「もう十年も経つんだね」
ぼそっと呟いてみる。思い出されるのは別れの時だった。
「お姉さま!」
静かに集落から出ていこうとしたのに、アヴェルスはヴァルシアに見つかった。
「あれ? ばれちゃった?」
「どうして……」
ヴァルシアはぽろぽろと涙をこぼして言う。
「ねぇ、ヴァルシア。もういいよ」
ヴァルシアはきょとんとした顔。アヴェルスはその顔が愛おしくてしょうがない。
「ヴァルシアはアーヴェのこと、嫌い?」
「……大好きですわ」
ヴァルシアはふふっと笑う。涙はいつのまにか消えていた。
「そっか」
アヴェルスも優しく笑う。
「ごめんね」
「お姉さま!」
アヴェルスはそれを最後に、叫ぶ妹を振り返らずに集落を去った。
(あれから十二年か……)
その間に集落は驚くほどの進化を遂げていた。木の実を取り、人間を襲って物資を得ていたあのころとは違い、水車や製鉄所などが出来ており畑を耕す者もいる。まるで人間の村のようだ。
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