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 不意に聞こえた声。  僕が剣を構えて振り向くと、そこに綿雪にも似た純白のドラゴンが舞い降りた。周囲の草花がその大きな翼から巻き起こる強風に煽られ飛散する。 「斬らないでね」  白いドラゴンの上から一人の女性が飛び降りてきた。彼女の纏う絹の羽織が羽のように広がる。 「え、ドラゴンに乗ってる……?」 「そう。ドラゴンって乗れるの」  彼女は当然のように言って、僕の前に立つ。後ろのドラゴンが攻撃してくる様子はなさそうだ。 「あなたは月光石って持ってる?」 「ああ、そりゃもちろん」  僕は腰に付けた革袋の中から淡く光る石を取り出す。月光石は夜になると発光する鉱石で、夜の森では必需品だ。 「その光をね、ドラゴンの逆鱗に当てるの。顎の下よ」 「いや大丈夫なのかそれ」  ドラゴンは月光で回復する。ドラゴンハンターの間でも「月夜の討伐はやめとけ。結局朝になる」と言われていた。 「ええ、ドラゴンは月の使者。そしてその月光の所持者はあなた。だからその月光に当てられた彼はあなたに従うことになるの」 「なんでそんなこと知ってるんだ」 「質問はあとで。それより早くしたほうがいいよ。彼が自然回復しちゃう前に」  彼女に言われ僕がドラゴンに向き直ると、先程まで這いつくばっていたドラゴンが身体を起こそうとしていた。 「続きは星空で話そうよ」
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