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「彼、この子の彼氏みたいなの」
夜の闇と星に囲まれた彼女は、自分の乗る純白のドラゴンを見つめながら言った。僕は自分の脚の間にある濃青色の鱗を見る。
「このドラゴンが?」
「うん。いつも仲良さそうにしてたんだ。もしかしたら兄妹かもしれないけど」
ドラゴンが複数いる場面はあまり見たことがない。いや、むしろ避けてきた。一匹でも頑強なドラゴンが複数いた場合、勝ち目がないからだ。
「だからつい割り込んじゃった。ごめんなさい」
「いいよ。こんな裏技教えてもらったし」
ドラゴンに乗れるなんて、ドラゴンハンターの間でも聞いたことがない。ドラゴンハンターはその特性上、高い戦闘能力と情報収集力が必要となる。
彼らでも知らないとなれば、それは本当にごく僅かしか知らないことなのだろう。そもそも瀕死とはいえ生きているドラゴンの顎に近寄ること自体危険だ。
「でもなんでこんなこと知ってるんだ」
「私も偶然なんだけどね。雪山を歩いているとき、頂上にこの子が倒れてたんだよ。全身傷だらけでさ。最初は雪男かと思っちゃった」
「ドラゴンハンターにやられたんだな」
「うん、私もそう思う。それでもなんとか逃げてきたんだろうね。でもそのとき昼間だったから回復もできずにいて」
なんとか出来ないかって考えてみたの、と彼女は言った。そしてドラゴンと月の話を思い出し、月光石を近付けてみたのだと言う。
「喰われるかも、とか考えなかったのか」
「考えたよ。でもあんまりにも勿体なくてさ。ほら見て」
星の光をきらきらと反射させながら、悠々と空を泳ぐ真白の竜を見た。
「こんなに綺麗なのに、傷なんて似合わないでしょ」
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