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「でっか!」  丸い木のテーブルに乗せられた大皿とその上に乗る巨大な塊肉ステーキを見てサクサは驚きの声を上げた。彼女が膝を抱えて丸まれば、すっぽりと包み込まれてしまいそうなサイズだ。 「うわー噂には聞いてたけど、こんなにでっかいとは」 「さすが『でっかいステーキ』って名前だけはあるね」 「まさか商品名とはな」 「名に恥じなさすぎでしょ」  トラクトサイトの街にある唯一の酒場。昔はたくさんの人で賑わっていたが、今の店内には僕たちしかいなかった。  こんがりと焼きあげられ肉汁の滴るステーキをノコギリのようなサイズのナイフで切り分け食べる。湯気の立つ肉を平らげると、彼女は木の椅子に座ったまま手を合わせた。 「でもよくこんなお金あったね。どれだけ釣ったの」 「いや、剣を売ったんだよ。結構いい額になった」 「ハンターの時の? まだ持ってたんだ」 「お守りにね。でももう必要ないから」 「そうだよね」  この世界はもう終わるから。  二人とも言葉にはしていなくても、確かに聞こえていた。 「あ、やばい。あと30分しかないよ」  椅子に座って空の皿を見つめたまま、慌てるような声で彼女は言う。   「え、もうそんな時間か」 「他に何かしておきたいことはある?」 「ステーキも食べたし、僕はもう心残りはないかな。サクサは何かないの?」 「うーん、そうだなあ。……あ、これはまあ心残りってわけじゃないんだけど」    彼女は椅子から立ち上がる。ガタっと音を立てて椅子が床を擦る。  そのまま出口に向かいながら、彼女は肩にかけた革袋から拳大の石を取り出した。 「最後は青空で話そうよ」
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