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「この青空を思いっきり飛んでみたかったの」  純白のドラゴンに乗った彼女は絹の羽織を靡かせながら言った。僕は深青のドラゴン背に座り彼女の横に並ぶ。 「月光石って昼でも使えるんだな」 「昼間でも月は変わらずそこにあるからね。見えにくいだけで光ってるんだよ」 「そうなんだ。知らなかった」 「もう必要ないけどね」  どこまでも透き通るように青い空を、切り立つ山々よりも高く飛翔する。こんな真昼にドラゴンに乗っても、もう怖がらせることも攻撃される心配もない。  並列する二色の竜を見ながら、悪くないな、と思った。    星空に始まり、青空で終わる。  この美しい世界の終わりとしてはなかなか悪くない。 「結構楽しかったね」 「僕もだよ。多分ドラゴンハンターのままだったら、ここまで楽しめなかった」 「じゃあ私のおかげだ」 「その通り」   僕が言うと、彼女は「へっへっへ」とわざとらしく得意げな、照れ隠しのようにも聞こえる声で笑った。ばさり、とドラゴンが翼を動かす。 「ま、せいぜい元気でね」 「世界が終わるってのに、最後の挨拶がそれかよ」 「別に死ぬわけじゃないでしょ」 「そうだけどさ」  もしも、と彼女の言葉を聞いて思ってしまった。  「もしも奇跡が起きてもう一度出会えたとしたら、僕たちは友達になれるかな」  返答には数秒の間があった。  彼女は言う。 「無理だよ」
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