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 彼女の声が僕の耳に響く。  真っ白な鱗の上に座る彼女は前だけを見つめている。 「私たちにそんな奇跡が起こったとして。こことは違う世界で、顔も名前も違ってさ。それはもう全く別の存在だよ。絶対に同じ関係にはなれない」  淡々と、彼女は言った。  湖面に波も立たないような静かな声で。 「だから」  まるで自分自身に言い聞かせるように。 「だから、やっぱり世界は終わるんだよ」    彼女の言うことは正しい。今までの仲間たちもそうだった。  この場所から離れた途端、僕たちは二度と交わることはない。  だとすれば、なんて儚い関係なんだろう。  時計を見る。  あと数分ですべてが終わる。この理想の世界も、僕たちの関係も。  なかなか悪くないなんて、そんなわけがなかった。   「……サクサ、本当に今までありがとう」 「あはは、しんみりしちゃうなあ。でもまあ私も楽しかったよ。ありがとうアヤト」  青空を白く切り裂きながら、彼女は穏やかな声で言った。 「最後まで、いつも通りにあなたがいてくれて良かった」  動かない釣り糸を見つめる彼女の横顔をふと思い出す。  ――いつも通りが一番幸せ。 「月並みでごめんね」     それを最後に、すべての音が無くなった。
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