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◇◇◇◇
「ジャーン! 」
家に帰ると小夜と恭太がいた。
なんとなく、3人暮らしという生活形態が始まっていたのだった。それもこれも小夜のため。華子はどっさりと貰ってきた学校からの書類をひとまず机に置いた。
帰って早々、ご機嫌よく新しく描いた絵を見せてくれる小夜に笑いかける華子。
「わあっ、すごい! 青々として素晴らしい景色だね」
小夜は、五月晴れの海辺の様子を描いていた。大人顔負けの色使いである。
彼女自身の優しい人格がよく出ていて、柔らかい色彩で描かれた1枚だった。
「ねえ、夏になったらお父さんが海水浴に行こうって! 華ちゃん! 」
華ちゃん、と小夜は呼ぶようになっていた。
それもこれも、華子が小夜を子供教室に1度連れて行って遊んでからそう呼ぶようになったのだ。子供たちに感化されたみたいだ。
「おかえりなさい、華子さん」
優しく恭太が言った。
彼は、プライベートで色々あった時に会社で有給を全て消化してしまったため、現在仕事に励む日々をおくっている。
今日は珍しく早く帰れたようだ。
「今日はね、鰹のメニューだよ」
「そうなんだよ、華ちゃん。はつがつおっていうの」
「初鰹ね、おばちゃん大好きだわー」
3人揃って、夕食をいただく。
恭太はよく家事もこなしてくれて本当に助かった。
新しく始まったいまのこの関係をなんというのか……?
たまに考える時があるけれど、あまり答えをすぐに出することは、もうこの歳なのでお互いにしない。
夏には海水浴へ行こう。
キャンプもいいかもしれない。
秋には山登り
冬は、スキーかな?
小夜という大切な宝物がある限り……
新しい人生の楽しみを見つけた華子であった。
了
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