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「そうしようね。小夜ちゃん。お母さんのこと待ってようね」
華子は、そっと言った。
小夜の目は潤んでいた。
┈┈そのあと、すぐに警察が来て亜由美を連れて行ってしまった。おそらく騒動を聞いて、誰かが連絡したのだろう。
連れていかれる時の亜由美は、ここに来た時の勢いは一切なく青ざめた顔だった。強気なんてものは全く見られなかった。
◇◇◇◇
┈┈┈┈恭太は、小夜をずっと抱きしめながら「すまない」と繰り返し言っていた。
そしてそのうち、小夜は寝てしまったのでそっとベッドに横たわらせてあげた。
静かになったあと恭太はポツリと打ちあけたのだった。
「篠崎さん、本当に今回はこんなご迷惑をおかけして申し訳ありません。……亜由美の心を俺は分かっていなかったのかもしれません。小夜の障害を認めた発言でいま気が付きました……俺の心が離れていったのは、そのせいだとずっとあいつは思っていたんですね……」
そしてそのまま、今朝方、青山が来たことを華子に打ち明けたのだった。
自分が篠崎鉄男の子供ではなく、その妻の志津の子供であると恭太は断言した。
華子は少し驚いたが、全てがわかったような気がした。おそらく、青山という人は、分かっていて接触してきていたのだ。
恭太が幸せにしているかどうかずっと気にしていたのかもしれない。……鉄男がお金を仕送りし続けていたのも知っていたのだろう。
「あの、篠崎さんはどうして夜に外に出ていたんですか? 」
「あ……っ! そう、その、取りに行こうとしたんです」
華子は鉄男が死んだ後に見つけた箱の話をした。おそらく中になにか入っているんだろう、と。
「俺も、中身が気になるな……何がはいっているんですかね」
「じゃあ、退院したら明日にでも一緒に開けてみましょうよ。……私もこんな手になったから開けてくれると嬉しいです」
2人は明日の晩に、と約束をした。
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