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◇◇◇
地元の子供教室は、市民センターのなかでやっていた。
数年ほど前からだが、この田舎で学童保育がなく、困っている親たちが団結して設立したものだった。
本来ならば、地域の人間との交流という名目で使われる子供教室だが、それは次第に回数が週2回と増え、いつの間にかみなが希望するように学童のような場所へと変貌を遂げた。
学校が終わってから、この地区のたいがいの子供達は水曜日と金曜日にこの市民センターへ足を運ぶ。
着いたら宿題をしておやつタイム、遊びの時間まである。制限は18時まで。
その子供たちをお世話しているのが、華子のようなボランティア精神を持った地元の人々である。年齢は様々。おじいもおばあも、みんな我が孫のように地元の子供たちを可愛がっていた。
「ねえ、篠崎さん。」
中でも最年長の森田がついて1番に声をかけてきた。
「なんでしょう? 」
「あのね、そろそろ卒業生たちになにかしたいと考えてるんだけど。何にしようか迷っているの。」
「あ……。」
そうか、卒業シーズンか、と華子は思った。
「毎年、どのような事をされてるんですか? 」
「そうねぇ、好きな唐揚げやケーキを用意して子供たち全員でランチして卒業生にプレゼントを配るのよ。でも今年はコロナで……。」
ああ、そうか。
思うように出来ないと言ったわけか。
「なら、プレゼントだけでもいいんじゃないですか? 」
明るく華子は言ったつもりだった。
「そう? ほんとにそれでいいかしら? 」
「あ……っ! でも予算とかどうなんですか? 」
華子は思い出したように訊いた。
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