立春

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「おかえり。2人とも喧嘩しないでランドセルと水筒はこっちのカゴに入れてね。」 森田が子供たちを促す。 その間にも数人教室に入ってきたのだった。急に教室の中は賑やかになる。 「のどかわいた。今日のおやつはなに? 」 早くもプラスチックのお皿に乗ったお菓子を覗き込みに来る子もいる。 「あ! 華ちゃんだ! 」 その中の一人が華子を見つけて近寄ってくる。 「華ちゃん、この前言ってたハコもってきてくれた? 」 輝くその目には、どんな未来が写っているのか、こちらまで明るい気持ちになり華子は微笑んだ。 「持ってきたよ。かなちゃんとお店屋さんしようと思って。」 そう言って華子が持参した紙袋から取り出したのは、お菓子が昔入っていたドーム型の空き箱だった。 そして、色紙数枚を一緒に出してやる。 「わあー! すごい。華ちゃん! 宿題したら作ろうよ! 私が店長ね。」 そう言うと、かなちゃんはいくつかある教室の棚の中から的確にマジックペンとノリをだしてきたのだった。 「あ! かなちゃん手洗いした? おやつは? 」 森田が気づいて声をかける。 「かなちゃん、先にしておいで。」 華子が声をかけるとかなちゃんは頷いた。 「わかった。これ、見張ってて。」 なにを誰から見張るというのだろう?華子は吹き出しそうになる。 「あ! すずきだー!」 その隣で1年生の男の子ケンちゃんは、鈴木の姿を見つけた途端に近寄った。 「ねえ、今日もスマホもってる!? 」 「ないよ。」 お断りする鈴木においかけるケンちゃん。 「うそだ! 大人は絶対もってるもん! 」 「宿題きちんとやってからな。あとで。」 そう言われて一旦は引き下がって出されてある長机にノートと教科書を出すケンちゃん。 「本読みあるからきいて、すずき。」 「あのな、すずき、じゃなくて鈴木さん、だろ! 」 「すずきさん。」 ケンちゃんは、本読みしたらサインをするカードを鈴木に渡して読み始めたのだった。  それを横目で見ながら、宿題をすませたかなちゃんは、華子とお店作りに没頭した。ハサミでうまいこと窓の部分を切り抜いてそこから商品の受け渡しができるようにするのだという。
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