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華子は、この時間がとても好きだった。子供たちと一緒にいると自分の中の毒素が抜かれていくような気になる。いわゆる人生デトックスと華子は心の中でよんでいた。
「ねぇ、はなちゃんここにテープつけて。」
どうやら1人では角にテープを貼るのが難しいらしく華子にお願いしてきた。
華子は器用にハコを傾けて角を指で押さえてやった。それに対して小さなシジミのような指先で、鼻息を荒くさせながらテープを貼る姿にまたもや吹き出しそうになる。
「これでもう1回やってごらん。かなちゃん。」
「うん。……あっ!できた!」
嬉しそうな子供の声。子供は日に日に成長をする。それは歳を重ねる自分にとっていい刺激になった。決して、家にいる鉄男のようにはなりたくない。アレは成長することを辞めた大人の行く末だ。華子はそう思った。
「かんせ〜いっ!」
嬉しそうな声と共にお店作りは成功した。
「凄いじゃない。かなちゃん。」
華子が褒めるとキラキラとした目をより一層輝かせて誇ったように頷く。その様子に気になった子供たちが集まりだした。
ケンちゃんも宿題を終えてこちらに参加してくる。
こうしてお店屋さんは開店したのだった。
「篠崎さん、ちょっといいですか?」
子供たちが遊ぶことに必死になり始めたその時鈴木に声をかけられた。
「はい?」
「一応、連絡先教えて貰ってもいいでしょうか?週末、近いモールまで買いにでますか。」
鈴木に言われ華子はLINEを交換しよう、と提案した。すると、意外な答えが返ってきたのだった。
「すみません、僕LINEとかはやらないんです。」
「え?ほんと?」
思わずのけぞった華子。
「今時珍しいですよね。ごめんなさい。なので、ケータイの番号教えて貰っていいですか?」
そう言われ、華子は自分でも覚えていない番号を差し出すことになったのだった。
何故、鈴木はLINEをしないんだろう?
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