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「厚木亜由美さん。あなた、ちょっとおかしいんじゃないですか? 」
華子は、切り出した。
酷く気分がムカムカする。
「確かに私は子育ての経験がありません。だけどそれと今回のことの何が関係があるんでしょうか? 言わせてもらいますけど、あなたは自分勝手ですよ。不倫なんかして。そんな中でもご主人の恭太さんはお子さんを守ろうと必死でしたよ」
「あなたに言われたくないわよ。人の家庭のこと分かんないでしょ! 」
亜由美は、睨んできた。
「頭悪いんですか? 」
「え? 」
「あなたは1部しか小夜ちゃんを受け入れてない。……全てを受け入れることからしか始まらないのでは? 子育てってそうなのでは? 」
華子は、自分からこんな言葉が出てくるものかと感心しながら続けて喋った。
「亜由美さん、あなたは可哀想な女性ですね。今から刑務所ですか? 出たらどうします? お付き合いなさってる男性の元に帰りますか? 」
亜由美の目が大きく開かれた。
華子は、にっこりと笑う。
「うちは、小夜ちゃんをきちんと預かり育てる義務があるので私がきちんと協力して育てます。ご安心くださいね」
「義務ですって!? 」
亜由美がさらに大きく目を見開いた。
「ええ。主人の兄の子供ですもの。親戚ですもの。助け合っていかないと」
「そんなの許さない! 」
「では、小夜ちゃんにえらんでもらいましょう。」
華子は青い顔の小夜に顔を向けた。
「小夜ちゃん、どうしたい? 」
恭太と小夜は黙ってしまった。
いけない。
やはり言いすぎてしまっただろうか?
華子の脳裏に後悔が浮かんだ時、小さな声で小夜が言った。
「わたしは……おかあさんがきちんと笑える日までお父さんとおばちゃんと……おうちで待ってる……」
小夜は確かに口にした。
こんな時でも自分のことを1番にしない小夜に華子は、親子の絆の強さを感じるとともに健気さに胸を打たれた。
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